Oncology Times

KOL対談:CRC業務の1日のスケジュール、業務の裏側について

今回のOncology Times intellimでは、インテリム受託案件の医学専門家をされている国立がん研究センター中央病院(以下、NCCH)水野孝昭先生とCRCの荒木しのぶ様をお招きして、CRCの業務内容を中心に、なかなか普段お聞きできない業務の裏側なども含め、様々なお話を伺いました。

水野孝昭先生とCRCの荒木しのぶ様

PM

現在、NCCHに依頼している、プロジェクトでの業務を基に、CRCとCRAの業務をお互い理解した上で、より良い業務提携ができればということで、今回の対談の機会を設定させて頂きました。
事前に荒木様から、業務紹介の資料を頂きましたが、担当される試験数が多いというのが第一印象です。

荒木様

現在約20試験を担当しています。そのうち、10試験が患者さんの組み入れ登録が可能です。その他は、登録完了して落ち着いている試験です。

PM

担当する試験数は、CRCとしての経験年数の長さに依存するのでしょうか。

荒木様

そうですね。試験をできるだけこなしているうちにこうなりました。

水野先生

それは、荒木さんだからこなせている、ということもありますよね。SMOと協働でされている施設もありますが、NCCHは如何でしょうか。

荒木様

NCCHでは、派遣を含め全試験病院所属のCRCで担当しています。私は、現在インテリムがモニタリングを担当している試験の主担当をして、同時に、先端医療チームのリーダーもしていますので、他の部員が休みの時の患者さん対応もカバーしています。
また、現在の抗がん剤の治験の流れとして、試験によっては第Ⅰ相試験が、Expansion期に移行し、第Ⅱ相を飛ばして第Ⅲ相に入るような傾向があります。1本の試験が完結せず、5年以上続けてExpansion期を実施しているものもあります。こうなると結果的に担当試験数が増えてしまいますね。

PM

事前に頂いた資料によると、担当される患者さんが最大30名ということです。1日平均1~2名の患者さんを対応されているというところでしょうか。事前準備などが難しいのではないですか。

荒木様

完全に対応するのは難しいので、担当患者数が20名後半になると、チームの部員に分散して調整しています。

PM

投与中の患者さん対応の方が業務量的に多くなると考えますが、試験の進捗や患者さんの治療継続状況は予測が難しいと思います。状況に応じたCRCの業務調整もリーダーさんが関与されるのでしょうか。

荒木様

担当者数の振り分けや残業量などを把握しながら、チームで相談して分担しています。

PM

他試験でNCCHを訪問した時、CRCさんと担当の先生のスケジュールを伺う機会がありました。
先生方はもちろんCRCさんのスケジュールも朝から夕方までびっしり詰まっていました。通常、朝は何時から始めていらっしゃいますか。

荒木様

基本的に勤務は8:30からですが、予め準備が必要な業務があるときは早めに出勤します。

PM

お話を聞いていて、医療機関での勤務は自分の都合だけでは回らないことを改めて痛感します。

CRC1日のスケジュール

PM

昼休みなどはどうされているのでしょうか。

水野先生

先端医療科は、基本的にチーム医療ですので、分担して時間をずらして取っていました。

荒木様

昼食等は決まった時間は取れず、患者さんの来院のタイミングを計りつつ、メールも確認しながら取っています。片手で昼食を食べながら返信している内に、患者さんが来院して呼ばれることも多々あります。

水野先生

CRCは呼ばれるリスクが常にあるので、財布持って病院敷地外のキッチンカーとかは行けないんですよ。

荒木様

丸の内OLとか、お昼におしゃれなランチをして、みたいなのは羨ましいですね。

PM

以前、東病院(NCCE)でキッチンカー見ましたよ。

荒木様

実は、NCCHにも来ていますよ。

水野先生

東銀座にもたくさん来ていますけど、医療者は、基本的にPHSの電波が届かない範囲に出られないので、だからこそ病院内にキッチンカーが来てくれています。NCCHでは、敷地内にキッチンカーを誘致しているような感じですね。

PM

そうなのですね。頂いた1日の業務スケジュールでは、患者さんの対応が外来で始まり、1日平均5名、少なくても2~3名です。
例えば、治験の同意説明を実施する時間帯の目安はあるのでしょうか。

荒木様

目安はありません。先生が患者さんの診察中に急にCRCを呼び出すこともあります。先端医療科以外の患者さん対応も依頼されますので、外来対応中に別の患者さんのことで呼ばれることもあります。先生が時間を調整してくださることもあるのですが、最近は説明文自体が長くなっているので、患者さんへの説明にも時間がかかります。通常の飲み薬や点滴だと比較的説明しやすいですが、治療方法が特殊だと、説明に1時間以上かかります。

坂本部長

最近では治療方法や試験の内容が複雑なものも増えていますよね。先程のお話から、同意説明のタイミングも急な場合があるとのことでしたが、1日の業務を進めるうえで、工夫されていることはありますか。

荒木様

いつ呼び出しがあるか予測ができませんので、予定を立てるのは難しいです。対応できる業務からこなすことになります。隙間時間に、どれだけ上手に業務をこなせるか、というところになるかと思います。

PM

原資料からEDCへのデータ転記業務は担当CRCさんがされるのでしょうか。EDC業務と患者さん対応業務を明確に分けている医療機関もあるようです。

荒木様

採血キットの準備や採血データ等の転記を担当するアシスタントがいる場合もありますが、自分が担当する試験のEDCデータ入力は、基本的に自分で対応します。

PM

EDCにデータを入力する際の原資料からのデータ転記に対して、先生方のコメントを確認する場合もあると思います。このようなコミュニケーションはどれぐらい頻繁にあるのでしょうか。

荒木様

電子カルテを見て、有害事象に上がっていない症状や臨床検査値異常などがあれば、電子カルテ内にメモを残して先生に確認を依頼しています。

水野先生

有害事象とするかの判断は、CRCから問い合わせを受けて検討することもあります。

PM

電子カルテのシステム上でのコミュニケーションが上手く活用されるということが理解できました。さらに、経験豊富な先生は特に試験数が多いと思います。
私が今ご一緒している先生も、ほぼ毎日のように同意説明文書を見ていると仰っていました。膨大な仕事量ですよね。水野先生は、治験の担当医師として関わられたとき、日常診療と並行しながらどのくらいの治験の患者さんを対応されていますか。

CRC1日のスケジュール

水野先生

先端医療科は治験に特化しており、毎日1人専任医師が外来をしています。外来で同意を取得して、残りは入院患者対応という形で行っていました。 他科の先生方の一般的な外来スケジュールの組み方は、午前の早い枠に抗がん剤投与の患者さんの予約を入れます。なぜなら、早く外来化学療法室に抗がん剤を投与する患者さんを送りださないと、化学療法室の稼働が後ろ倒しになるからです。そのため、早いと8時から抗がん剤投与となります。採血結果を見て即投与可能な患者さんは朝早めに来ていただいています。保険診療の場合、投与可能の確定をしないと調剤が開始されないし、高価な薬剤も増えていますので確定がないまま調剤して破棄になることは避けないといけません。外来の朝一最初の10人ほどは、即投与可能な患者さんの対応をします。その後、治療法の説明が必要な患者さんの対応や、CT結果を見て説明する患者さん等を午前の終盤に対応します。さらに、午後の患者さんが少し減る時間に、治験の同意説明の対応をするようにしている先生もいます。

荒木様

先生によっては治験の患者さんはこの時間帯と、分けて予約を入れる人もいますね。治験も分けずに朝一に予約を入れる先生もいますし、治験は説明に時間がかかるから、午後に予約を入れたいという方もいらっしゃいます。先生の裁量で決まりますね。

PM

急に治験の適応となりそうな患者さんが来られた際には、どうされているのでしょうか。

荒木様

先端医療科はカンファレンスで試験毎に対象となる患者さんを検討していますが、診療科によっては突然同意取得の呼び出しが来るときもあり、対応できるCRCをその場で調整しています。

水野先生

1週間前にCTを撮ってもらい、その結果を外来で説明するのであれば予定は立てやすいです。
一方、予約の都合や患者さんの来院を1回で済ませるために、午前中にCTを撮って、その結果で抗がん剤投与の要否を決める場合は大変です。CTの結果、SDより良い結果だったら今服用されている抗がん剤を変えずに投与継続となりますが、PDとなっていたら他の治療方法への変更を考えることが必要になります。そうなると他の治験や他科の先生に電話して相談したり、最終的に治療方針の変更をしたり、新たな治験が選択肢に上がってくることもあります。

荒木様

初めての患者さんの場合、先生が患者さんに説明している時間でCRCは急いでカルテを確認します。プロトコルを横で見ながら適格性を確認して問題なさそうなら、同意説明に進みます。

PM

CRAは、今日説明しましたとか、同意が取れましたという連絡をCRCさんから突然いただくことがあります。一方で、依頼者とエントリープランの話もよくします。あらかじめ組入れの予定を教えていただきたい気持ちは山々なのですが、ご施設側の実情がよくわかりました。Ⅰ相試験などコホート毎の症例数に限りがある場合、次の症例はどの医療機関に入りそうなどの情報をいただくことで、ある程度組入れ予定が見えやすくなります。このような予定に関する情報は、できるだけいただきたいと思っています。

荒木様

CRCとしても、患者さんの予定はできる限りお伝えするようにしています。その方が、組み入れ時の注意点など、CRAからのアドバイスを元に安心して準備ができますし、何かトラブルが発生した場合の対応も早く頂けます。とはいえ、CRCからの情報共有が不十分なケースもあるので、ここはCRC側の改善点だと考えます。

PM

CRAとしてもCRCさんに連絡するタイミングや方法を適切に見計らう必要がありますね。荒木様から、その他CRCさんの業務内容について補足はありますか。

荒木様

記録に残らない業務もたくさんあります。例えば、他院から取り寄せた腫瘍検体のスライド全てに記入されている患者さんの氏名や病院名などを、カッターの刃で全て削ってマスキングしたり、治験情報を1枚1枚に追記したりとか、地味に時間がかかる作業が結構あります。

PM

私たちが想像するCRC業務以外にも、実際には多くの作業が発生していて、お忙しい毎日を過ごされているのがよく理解できました。
CRAとして、そういったご都合も考えながら、業務を進めていきたいと思います。貴重なお話、誠にありがとうございました。……

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