再生医療コラム

ヒト細胞加工製品の毒性評価における試験デザインの考え方

以前のコラムでご紹介した通り、再生医療等製品の品質・安全性評価については、近年、ミニマム・コンセンサス・パッケージの提言など基準が示されたものの、製品ごとの特徴を踏まえた評価が必要であり、その内容はケース・バイ・ケースとなっています。
https://www.remedy-company.com/column/rgm/202302_tumorigenicity.html
そのため、独立行政法人 医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、RS戦略相談として、治験計画の届け出を行うまでに確認すべき製品の品質・安全性試験の充足性などにおける指導・助言を行っています。

今回は、治験計画を届け出る際に必要なヒト細胞加工製品における非臨床安全性試験(毒性評価)のデザイン等の考え方について、PMDAのRS戦略相談にて指摘されることが多い事項等を踏まえご紹介したいと思います。

~はじめに~

非臨床安全性試験の主目的は、投与されるヒトの安全性を担保すること、すなわち毒性評価を実施することとなります。そのために、ヒトへの投与量、副作用、毒性標的器官、加えてヒト細胞加工製品においては造腫瘍性などを推定・予測可能な試験デザインが必要となります。

毒性評価の対象は、細胞成分、非細胞成分、製造工程由来不純物に分けて考えます。
細胞は生体内において、それぞれの機能に応じた適切な臓器・器官に局在しているものですが、投与後、異所性の局在を示した時、または同所性であっても過剰な効力を発揮した時に、製品が産生する生理活性物質等が毒性・造腫瘍性を示す可能性があります。そのことから、動物を用いた一般毒性試験を実施する必要があります。非細胞成分、製造工程由来不純物については、可能な限り各成分の特性や含有量、および公表データや一般毒性試験結果を踏まえ、理化学的手法に基づき評価することが推奨されています。

~一般毒性試験~

一般毒性試験の試験デザインにおいては、動物種・性・数の選定、投与量、投与回数、投与経路、観察および検査項目の検討が必要となります。薬効薬理試験の結果などを元に、臨床における用法・用量などを検討し、臨床試験プランを元に一般毒性試験のデザインを検討することとなります。
動物種については、異種免疫反応を回避するために免疫不全動物または免疫抑制剤の使用を検討します。尚、ヒト細胞加工製品については、動物種1種での評価が可能とされています。動物の性については、原則両性となりますが、製品が男性、女性のみに投与されるような製品においては、片性のみの実施も選択肢に入ることとなります。また、動物数については、検査時に評価可能な動物数とされており、観察期間を考慮した設定が必要となります。
投与量については、原則、最大耐量(MTD)または投与可能な最大量(MFD)のいずれかで実施することとなります。ヒト細胞加工製品は特にマウス・ラットなどの小動物では投与可能量が限られていることから、MFDで実施されることが多い印象を持ちますが、その際には、臨床で計画されている投与量に基づき安全性評価の妥当性を示す必要があります。
投与回数・投与経路については、投与後の生体内組織への影響を考慮し、臨床で予定されている用法と同様にすることが求められています。投与経路については、小動物において臨床適用経路での実施が難しい場合には、代替経路の使用も検討されますが、その妥当性の説明が求められることとなります。
観察・検査項目については、ヒト細胞加工製品は通常、体内に生着・残留することから、単回投与であっても反復投与毒性試験の評価方法に則った評価が必要となりますが、移植場所により細胞の局在が限定的である場合などには科学的に適正であれば修正も可能とされています。ただし、主要な生理機能(中枢神経系、心血管系、呼吸器系)に対する評価については、特段の懸念がないことを確認することを求められています。


低分子医薬品等と比べ、細胞加工製品は不安定なものが多いことから、一般毒性試験実施に当たり、ヒト細胞加工製品の投与前安定性の確認も必要となります。
一般的に、細胞加工製品は凍結された状態で病院等に搬送され、融解後、投与されます。細胞加工製品によっては、融解後、投与までの間に細胞死が起こるものもあります。また、細胞シートなど、生細胞の状態で輸送、保管、投与される製品もあります。そのため、投与時における細胞の品質を保証する必要がありますので留意する必要があります。

~非細胞成分・製造工程由来不純物~
前述の通り、非細胞成分(製品に意図的に加えられる化成品、バイオ医薬品、スキャフォールド等)及び、製造工程由来不純物(製造工程において使用される試薬、添加物等の残存物)の安全性評価については、可能な限り各成分の特性、含有量(推定残留量)を元に公知データおよび一般毒性試験の結果を踏まえ理化学的手法を元に評価することが推奨されています。これらのアプローチを元にヒトにおける安全性が評価できない場合には各種ガイドラインに沿った形で安全性評価を実施する必要があります。

~最後に~

製品をヒトに投与する際に、重要視されるのがヒトへの安全性です。そのため、製品の安全性を担保するために実施する非臨床安全性試験のデザイン設計は重要となりますが、再生医療等製品においては、まだ実績も少ないことから、デザイン設計はケース・バイ・ケースとなっているのが実情です。

レメディグループでは基礎研究・前臨床開発段階における開発計画・当局相談のサポートも実施しており、これまでにも各種PMDA相談(再生医療等製品戦略相談、再生医療等製品等の品質及び安全性に係る相談、カルタヘナ法関連相談など)のサポートの実績があります。
https://www.remedy-company.com/expertise/remedhi.html


また、レメディグループでは、再生医療等製品開発の基礎研究・前臨床の段階から臨床の段階まで対応可能な専門チームを編成しており、一貫したサポート対応が可能です。
再生医療等製品の開発に関するご相談がございましたら、レメディグループまでお問い合わせください。

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