再生医療コラム

再生医療等製品を使用するための条件と治験における保険外併用療養費制度について

この再生医療コラムをご覧になっている方も、再生医療に対する患者様の期待が日に日に高まっているのを感じていることではないかと思います。
しかし、難病だからといって、すぐに再生医療による療法を適用するわけにもいかないというのも同時にお分かりのことかと思います。
今回は、再生医療を実際の治療に適用するにはどんな条件があるのか、また、治験における保険外併用療養費制度について解説いたします。

再生医療等製品を使用するための条件

以前のコラムで、日本での「再生医療等製品」の定義とは再生医療に使われる製品のことではなく「遺伝子・細胞治療製品」なのです、とご紹介しました。

> 再生医療コラム:そもそも、再生医療とは?(別ウインドウで開きます)

そのような再生医療等製品の中には、怪我等によって自然治癒が期待できない疾患に対する「再生医療」を適用として承認を得られ、実際の医療現場で使用されているものもいくつかあります。
例)脊髄損傷、角膜上皮幹細胞疲弊症、重症心不全、関節軟骨欠損

しかし、治療の選択肢として近隣の病院へ受診し再生医療を受けたいと希望しても叶わないことがあります。
再生医療等製品の添付文書には「講習会へ参加すること」「トレーニングを受けた上で本品を使用すること」と記載されていることがあるため、この様な再生医療等製品を用いた医療行為は、全国でもある程度の体制が整っている限られた施設でしか受けることができません。

事前のトレーニングの必要性は治験の段階から再生医療等製品GCPに明記されています。

医薬品GCPと再生医療等製品GCPの違い

再生医療等製品を使用する先生方は、治験依頼者の立ち合いの下に動物モデルや練習用キット等を用いて事前にトレーニングを行うことで、手技の流儀、及び治験製品の取扱いの慣れ・不慣れによる結果のバラつきや失敗を抑え、治療成績の向上を図ることができます。
また、トレーニングを行うことで先生方も安心して移植手技を行うことができます。

さらに、再生医療等製品は、生きた細胞やウイルスが製品であるため、実際に使用する医師だけでなく、施設内で製品を管理する担当者や使用直前の調製などを行う担当者等に対してもトレーニングを実施します。そのため使用の際に手技を伴う再生医療等製品は、事前のトレーニングがとても重要なものであるといえます。

> 再生医療コラム:再生医療領域開発の実施環境が整うまで(別ウインドウで開きます)

製造販売承認を取得した後でも再生医療等製品は全例調査が原則のため使用成績調査が必要であり、採用された医療機関でもトレーニングが必要となります。

【参考】再生医療等製品の添付文書に記載されたトレーニングの必要性
【参考】再生医療等製品の添付文書に記載されたトレーニングの必要性

施設によっては、こういったトレーニングの体制を整えることが、容易でないところもあるかと思います。
インテリムでは再生医療等製品の開発に携わった豊富な経験があるため、開発から製販後の業務に加えて治験製品トレーニングの支援も行うことができます。
この記事をお読みいただき再生医療等製品の分野においてご相談等がございましたら、<お問い合わせフォーム>(別ウインドウで開きます)よりお問い合わせください。

再生医療等製品治験における保険外併用療養費制度について

再生医療等製品治験における保険外併用療養費制度とは?

では、その体制が整い、実際に再生医療等製品の治験が可能になった場合、次に懸念となるのが、費用負担ではないでしょうか?

日本は、国民皆保険制度により安い医療費で診療を受けることが可能です。この制度は、保険診療が認められた医療サービスに限定されているため、保険外診療のものは全額自己負担となります。
また、保険診療と保険外診療を組み合わせた混合診療の場合、保険診療で認められている診療も自己負担となる制度になっています。

評価療養とは保険給付の対象とすべきか否かについて適正な医療の効率的な提供を図る観点から評価を行うことが必要な診療のことです。以下が「評価療養」として定められています。※1

評価療養について

保険外併用療養費制度は、治験に係る職種につく人であれば、誰もが一度は頭を抱える制度ではないでしょうか?
上記で説明した通り、保険診療と保険外診療が混在した場合は全額自己負担となるが、本制度では一部の診療について保険適用を認め、支給対象経費として支払う制度です。
保険診療が認められない検査等の費用は治験依頼者(製薬会社など)が支払うため、被験者は保険適用される費用のみで治験に参加することが可能となります。

【再生医療等製品における本制度の適用】

では、治験期間中ずっと本制度が適用できるのでしょうか?

医薬品における保険外併用療養費制度の適応期間は、治験薬投与開始日から投与終了日までの期間となっています。

再生医療等製品は、医薬品と異なり、継続的に投与することは多くありません。
また、被験者の体内に長期間滞留するものでは、安全性の評価に時間を要するため、後観察期間が長くなる傾向にあります。

再生医療等製品の保険外併用療養費制度の適用期間及び適用範囲は保医発1125第9号※2に記載されている医薬品及び医療機器の治験との違いを以下にまとめました。※3

医薬品及び医療機器の治験との違い

> 再生医療コラム:再生医療等製品治験と医薬品治験の違い(別ウインドウで開きます)

後観察期間が長くなる再生医療等製品の治験において、後観察期間は通常の保険診療となるため、被験者には保険制度上の自己負担をしていただく必要があります。
しかし、後観察期間の検査等に保険診療が適用されていることから(制度上治験依頼者が費用を負担する必要はないが)被験者の負担軽減のため治験依頼者への請求を求める医療機関も多くあります。
そのため、インテリムでは治験実施の際、検査費用等が依頼者及び被験者において適切な費用分担となるよう医療機関との交渉も行っています。

【引用・参考文献】
※1:先進医療の概要について,厚生労働省 https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryouhoken/sensiniryo/index.html(別ウインドウで開きます) (2021/1/14 参照)
※2:「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」の一部改正について, 平成26/11/25
https://kouseikyoku.mhlw.go.jp/kinki/gyomu/bu_ka/shido_kansa/kikan_tsuchi/documents/261125-hoi9.pdf(別ウインドウで開きます) (2021/1/14 参照)
※3:医薬品に係る特定療養費製造について,中央社会医療保険協議会,17/2/9,https://www.mhlw.go.jp/shingi/2005/02/dl/s0209-6a2.pdf(別ウインドウで開きます) (2021/1/14参照)

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