概要
希少疾患RDとは、生命を脅かす消耗性疾患のうち、罹患者数が比較的少数な疾患である。その定義はヨーロッパでは2000人に1人未満、米国では1500人に1人未満、日本では5万人未満または2500人に1人未満など、各国においてさまざまである (1, 2)。この数字は、世界人口の59.5%を占めるアジアの人口規模を考慮すると重要な判断材料と言える。
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近年、アジア、特に東南アジア(SEA)経済は過去数十年にわたり成長を続けている。2020年度OECD開発センターの中期予測フレームワークによると、国内総生産(GDP)成長率は2024年まで平均約5.7%と、今後も成長は続くと予想される(4)。希少疾患は、通常は顧みられることのないニッチな人口集団で形成されており、そのほとんどが遺伝性によるものである。希少疾患として認識されている疾患は約6000〜7000あり、治療法が確立されているのは約500に過ぎない(6)。遺伝性疾患は出生時に診断できるため、疾患発症のほとんどは小児である。過去10年において、大手製薬会社は薬剤の製造コストやの売り上げが伸びないなどのリスクを考慮し、オーファンドラッグの開発に関心を示してはこなかった。しかし、世界人口の3分の2近くがアジアに居住しており、非常に稀な疾患ではあるが多くの患者が治療を求めている背景が現実にある(3)。
3カ国のケーススタディ希少疾患に関連する利点と規制関連事項
日本における希少疾患について
厚生労働省によると、日本における希少疾患は5万人未満または2500人に1人未満の割合で発症するとされており、医薬品の指定や承認は個別事例ごとに決定される(1, 2)。
日本では、独立行政法人医薬基盤研究所(NIBIO)(別ウインドウで開きます)が、希少疾患用医薬品・医療機器の申請者に助成金を交付している。また、オーファンドラッグ関連の申請の場合、PMDAの相談手数料が減額され、NIBIOの助成金交付期間について研究費の12%を税額控除として請求することができる(NIBIOが交付する補助金は含まれない)。
更に、NIBIO、PMDA、MHLWは、希少疾患関連の医薬品・オーファンデバイスの迅速な承認を行うため、効率的な支援を行う。
希少疾患/オーファンデバイスが承認されると、再審査期間が延長され、医薬品は最大10年、医療機器は最大7年まで延長される。
シンガポールにおける希少疾患について
シンガポールではオーファンドラッグの定義が曖昧な場合があるが、健康科学庁(HSA)によると、以下のような特性を持つ医薬品は優先される。
- 国内に他に安全な代替品がないことを前提として、生命を脅かす疾患の治療に使用できる
- 一部の癌や感染症などの疾病で、地域の公衆衛生上の懸念がある状況に置かれている
- 希少疾患に罹患している患者数が現在時点で少ない
- 疾患・状態に罹患している患者数の概算を示すことができる
上記のような条件を満たし、保健省によりオーファンドラッグに指定されると、医薬品登録の際に優先して迅速な審査が行われる。オーファンドラッグが承認されると、10年間の販売独占権が与えられる。目下のところ、シンガポールにおけるオーファンドラッグの保険償還は非常に困難である(3)。
タイにおける希少疾患について
現時点では、タイ保健省(MoPH)もタイ保健省食品医薬品局(Thai FDA)も、「希少疾患」の明確な定義を規定していない。
タイにおける希少疾患用医薬品の定義は、希少疾患と国内の医薬品不足の両者をともに……
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