安全性情報管理の仕事内容|忙しい?将来性も解説

医薬品に関する様々な仕事の中でも、医薬品の情報を収集・分析などを行う『安全性情報管理』に興味を持っている方も多いのではないでしょうか。

しかし、詳しい仕事の内容がわからないため「忙しくて大変なのではないか」「将来性はあるのか」と不安に感じることもあるでしょう。

本記事では、安全性情報管理の具体的な仕事内容などについて解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。

安全性情報管理とは?

メディカルライターが所属する企業のオフィス

安全性情報管理とは、治験で扱う被験薬・市販後の医薬品の安全性に関する情報を収集・分析・評価し規制当局などの関係機関への報告を行う職種や業務そのもののことで、ファーマコビジランスやPVとも呼ばれます。

そもそも、医薬品がの販売される前には有効性や安全性をきちんと調べるために「治験」が行われます。

この治験の段階でくすりの安全性や有効性について十分に確認がなされていますが、実際に市場に販売されてからは治験の段階よりも更に大多数の患者さんや一般の方が医薬品を使用することにより、新たな効能や副作用が明らかになることもあります。

治験中・市販後にこれらの情報を集めて分析・評価し、医薬品を安全に使用するための情報を取りまとめるのが安全性情報管理です。

どのような医薬品・医療機器であっても、患者さんの健康や命を損なうものであっては意味がありません。

医薬品の効果とリスクを正しく把握して、患者さんに安全して医薬品を使用してもらうために、安全性情報管理の仕事は非常に重要だと言えるでしょう。

安全性情報管理の仕事内容

安全性情報管理の仕事を簡単に言うと、
販売前後の医薬品の安全性に関する情報を収集・分析・評価・報告することです

ここでは、更に具体的に安全性情報管理の業務を説明していきます。

治験時の有害事象への対応

開発中のくすりの効果や安全性を調べる治験において、投与後に患者様に起きた好ましくない出来事を「有害事象」と呼びます。

有害事象は、治験実施施設の医師などから「症例報告」という形で治験を実施する企業に報告がされるため、安全性情報管理はこの症例報告を元に症状の重篤度や既知・未知の判断などを行い、データベースへの記録を行います。

その後、必要に応じて治験実施施設へ追加情報の提出依頼や、外部への情報共有を行いながら、有害事象とくすりの因果関係を分析・評価していきます。

最終的には医師からのヒアリングや国内外の文献を元に有害事象が副作用として考えられるものかをまとめ、PMDAへ報告を行うまでが治験の有害事象に対する一連の業務となります。

くすりの安全性に関わる情報を適切に収集・分析・評価・報告することで、医薬品の適切な使用を実現することが安全性情報管理の大きな役割と言えます。

発売後の医薬品における安全性情報の分析と報告

治験中だけでなく市販後の医薬品の安全性情報の分析・評価・報告も安全性情報管理の業務です。

前述の通り、医薬品の開発においては治験時に安全性やリスクが確認・評価されており、これらを踏まえて厚生労働省が医薬品としての承認・販売を行ってもよいものかの判断を行います。

しかし、副作用とは患者様の体質や既往歴、生活習慣や飲食物など様々な要因が絡みあって発症するため、市販後に治験時と比較して大規模の人がその医薬品を使用することによって新たな効能や副作用と思われる症状が見つかる場合もあるのです。

新たな副作用・効能に関する情報は、患者さんやその家族、医療従事者、その他外部との窓口となり得る品質保証部門だけでなく、提携企業や規制当局、医薬品製造後の調査結果など、様々なルートから情報収集を行います。

医学・薬学に関する国内外の研究発表文献などを参考にしながら分析を行い、最終的には治験時と同様にPMDAへ報告を行います。

医薬品のリスクを最小限に抑えるために、市販後も製品に関する安全性情報を継続的に収集・分析・報告することも安全性情報管理の業務の一つです。

医薬品の添付文書・患者向けパンフレットの改訂

これまで発見されていなかった副作用や効能が明らかになった場合、医薬品の添付文書・患者向けパンフレットの改訂を行います。

発売後も継続的に医薬品の分析・評価を行い、添付文書やパンフレットを改訂することで、有害事象の再発を防ぎ患者の安全性の確保を目指します。

安全性に関する情報収集と定期報告

治験中・市販後の分析や評価以外にも、症例報告や医薬品・成分などに関する情報収集を行い、定期報告としてまとめることも安全性情報管理の業務です。

医療現場から提供される症例報告以外にも、学会や論文など様々な場所・媒体で医薬品・成分に関する研究発表や安全性に関する情報が日々発表されています。

安全性情報管理は新たな研究に関する知見を深め、定期的にレポートとして自社内に共有することも業務の一つです。

安全性情報管理は忙しい?

新たに報告された有害事象や、PMDAへの報告が必要な安全性に関する情報があった場合には、定められた期限に則ってスピーディーに業務を進めなければなりません。

他にも、治験実施中のトラブルが起きた際の通知や、医療機関への安全性情報の伝達などに関しても速やかに対応しなければならない場面があります。

有害事象が発生した際にはスピーディーに行動しなければならなず、正確性も求められるという点を考えると、安全性情報管理の仕事は忙しいと言えるかもしれません。

また、薬機法や医薬品・治験に関する法令を理解するだけでなく、常に最新の情報へとアップデートをし続ける必要もあるため、常に勉強を行うことが苦手な方は忙しさや難しさを感じることもあるでしょう。

 

安全性情報管理の市場の状況

安全性情報管理に関わる市場ついて解説します。

医薬品の長期間服用が増加し医療情報のニーズが高まっている

現在、医薬品の長期間服用や濫用が増加し問題となっています。

例えば、デスクワークを要因とした座る時間が長い状態、運動不足、食生活の乱れなどが原因で糖尿病や高血圧など生活習慣病の罹患率は高くなっており、加えて医薬品を長期間服用する人も増加している傾向があります。

毎日の食事以上に大きな影響を及ぼす医薬品を長期間服用すると、患者さんの生活習慣や既往歴によっては医薬品開発時には予期できなかった影響がある可能性もゼロとは言い切れません。

そのため、医薬品の長期間服用で健康状態に影響がないか・どのような影響があるのか・有害事象の例はあるかなどを分析・評価する安全性情報管理の仕事のニーズが高まっていると言えるのです。

参考:株式会社グローバルインフォメーション「ファーマコビジランス市場- 成長、動向、予測(2023年~2028年)」、厚生労働省医薬・生活衛生局「医薬品・医療機器等安全性情報

RPAの導入が進んでいる

現在安全性情報管理の仕事では、人間に代わりパソコンを操作する仕組み『RPA(Robotic Process Automation)』の導入が進んでいます。

日本製薬工業協会の調査によると、RPAを導入する企業は25.0%、開発中の企業は10.9%と3割を超える企業がRPAを活用していると明らかになっています。

導入を検討する企業も約4割(39.1%)いることもわかっており、さらにRPAが普及していくと考えることができるでしょう。

導入企業からは「作業効率が向上した」「品質があがった」との声が寄せられており、安全性情報管理の仕事をスムーズに進めるために導入しているのだと言えます。

しかし、「大量の症例数を入力することに限界がある」という声もあり、現状では安全情報管理の仕事の必要性は大きく変化していないと言えるでしょう。

参考:日本製薬工業協会 医薬品評価委員会ファーマコビジランス部会 タスクフォース2「PV業務へのRPA導入の現状と留意点

医薬品の安全性監視環境が整いつつある

医薬品の安全性監視環境が整いつつあることも、安全性情報管理の現状です。

平成31年3月14日付けで、「医薬品の製造販売後調査等の実施計画の策定に関する検討の進め方について(薬生薬審発0314第4号、薬生安発0314第4号)」が発出されました。

ここでは、4ステップに分けて市販後の医薬品の調査を行い、有効性について科学的に確認することが大切であると述べられています。

安全性情報管理の仕事において、情報収集を踏まえて調査を行うことで、より適切な報告書を作ることができたり、医薬品の添付文書の改訂に繋げられると言えるでしょう。

参考:厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長、厚生労働省医薬・生活衛生局医薬安全対策課長「医薬品の製造販売後調査等の実施計画の策定に関する検討の進め方について

安全性情報管理の将来性

ここでは、安全性情報管理の現状と将来性について解説します。

ファーマコビジランス市場は成長が見込まれている

ファーマコビジランス(安全性情報管理)市場は2023年~2028年中に市場が成長すると見込まれています。
(参考参考:株式会社グローバルインフォメーション「ファーマコビジランス市場- 成長、動向、予測(2023年~2028年)」)

成長が見込まれる理由はいくつかありますが、

  • 医薬品の消費量の増加(が増加している)
  • 医薬品の副作用・薬物毒性の発生率の上昇

などが挙げられます。

 

参考:株式会社グローバルインフォメーション「ファーマコビジランス市場- 成長、動向、予測(2023年~2028年)

安全性情報管理で活かすことができるスキル

安全性情報管理の業務を行う上では、以下のようなスキルを持っていると活躍が期待できます。

  • 医学・薬学の知識
  • 医療・医薬品に関わる業務経験
  • 進捗管理能力
  • 英語力
  • コミュニケーション能力

1つずつ見ていきましょう。

医学・薬学の知識

活かすことが出来るスキルの1つ目は、医学・薬学の知識です。

安全性情報管理は、承認前の治験薬や医薬品を服用した後に起きる好ましくない反応の内容や原因を理解・分析しなければなりません。

医薬品添付文書以外にも様々な文献の情報をもとに分析・評価・報告を行い、患者さんが出来る限り安心して医薬品を使ってもらえるようにする仕事であるため、医学・薬学の知識を元に情報を正確に理解することが求められます。

医療・医薬品に関わる業務経験

活かすことが出来るスキルの2つ目は医療・医薬品に関わる業務経験です。

なかでも、臨床試験の開始から終了までに発生する手続きなどを行うCRAや、医薬品の営業活動や情報提供を行うMRなど、医薬品開発や医薬品に関する知識があると、安全性情報管理業務と関わりの深い分野での実績となることもあり、未経験からでも比較的業務への理解が早いことが見込まれます。(治験への参加で医薬品に関する知識など安全性情報管理で使用する類似した医薬品情報を扱った経験があるため、即戦力として活躍しやすいと期待できます。)

進捗管理能力

活かすことが出来るスキルの3つ目は進捗管理能力です。

安全性情報管理は膨大な量の情報を分析・評価する仕事であるため、日々入ってくる様々な情報を効率的に分析・評価できるよう、日々のタスクを管理するスキルが必要になります。

また、有害事象発生時など外部機関への報告には、期限が定められているため、その期限までにスケジュールを立てて業務に取り組んだり、突発的な仕事が入ったとしても業務の調整を行う能力は重要だと言えるでしょう。

英語力

活かすことが出来るスキルの4つ目は英語力です。

安全性情報管理は日本国内の症例報告だけではなく、国外の情報収集を行います。

また、国外の企業と提携する企業や取引がある企業に就職すると、英語でコミュニケーションを取ることもあります。そのため、コミュニケーションや専門用語を取り入れて会話ができる英語力があると良い(でしょう。

しかし、企業によっては症例報告や文書などの翻訳は翻訳家に依頼することもあるため、一概に全ての企業で英語力が必須というわけではありません。

コミュニケーション能力

最後はコミュニケーション力です。

安全性情報管理は治験の実施医療機関からの情報収集や、分析・評価後の各機関へ報告を行うため、提携企業、規制当局などといった各機関とコミュニケーションを行う窓口となります。

期限が定められた業務をスムーズに進めるためにも、要件や意図を的確に伝えられるコミュニケーション能力は大切だと言えるでしょう。

安全性情報管理で活躍を目指そう

Summary It is possible to become a medical SE with no experience.

現在の安全性情報管理は、市場の成長が見込まれていること、医薬品に関する安全性情報への注目度が高まっている状況から将来性のある仕事だと言えます

専門性が高い職種であるため転職の難易度は高い傾向ですが、未経験でも活躍できる可能性は考えられます。

医学・薬学など専門的な知識を持っている方や、医薬品開発に興味がある方、多くの人の健康に貢献したいという方は、安全性情報管理として活躍ができるかもしれません。