○研修講師:ここまでで本日の目標①「カプランマイヤー曲線を描けるようになる」が完了しました。
ここまでで何か質問ありますか。
○新人モニターAさん:3年時点で、死亡が3例、センサーの症例が2例で、死んでいるかわからない症例が2例いるのに生存率が0となるのはなぜですか。
○研修講師:いい質問ですね。実はカプランマイヤー曲線の作成時センサーのあるデータに仮定を置いています。その仮定をしっかり理解することでその疑問は解決し、よりグラフに対する理解が深まります。さっそく説明させて頂きますね。そして本日の目標②「イベント発生率の算出を行う上での重要な仮定を理解する」の内容となります。
カプランマイヤー曲線の生存率に関する疑問②
○研修講師:まず新人モニターAさんの疑問を順を追って説明させて頂きますね。
a)1年未満:生存率=1.000
死亡は全く発生していません
○研修講師:誰も死亡していないから納得ですね?
○新人モニターAさん:はい
b)1年 :生存率=0.800
登録から1年までに死亡が1例発生します。
○研修講師:観察症例が5例いて1例死亡しています。
(1-1/5)=0.800になります。これは納得できますか?
○新人モニターAさん:はい
c)1.5年 :生存率=0.800
登録から1.5年までに
死亡が1例センサーが1例発生します。
○研修講師:観察症例が5例いて1例死亡、1例打ち切りしています。
登録症例のうち死亡した症例の割合は(1-1/5)=0.800になります。これは納得できますか?
○新人モニターAさん:センサーが1例は1.5年時点では生存しているんですよね?であれば生存率0.800に納得です。
カプランマイヤー曲線の生存率に関する疑問②(続き)
d)2年:生存率=0.533 登録から2年までに
死亡が2例センサーが1例発生します。
○新人モニターAさん:この場合死亡している症例が2例なので生存率0.600にならいないんですか?
○モニターBさん:1.5年の時点でセンサーになった症例が死亡したと仮定すると生存率0.400になると思います。
○研修講師:Aさんの場合センサーの症例がすべて生存していると仮定して生存率を算出しています。Bさんの場合センサーの症例がすべて死亡していると仮定して生存率を算出しています。 ただし、カプランマイヤー法での生存率算出時はセンサーの症例に対して異なる仮定をおいて生存率を算出しています。
そこで本日の目標②となります。
本日の目標
①カプランマイヤー曲線を描けるようになる
②生存率の算出を行う上での重要な仮定を理解する
カプランマイヤー法の生存率の算出を行う上での重要な仮定を理解する
○研修講師:重要な仮定は以下となります。
仮定
センサーの集団におけるイベントの発生割合は、
センサーとならない集団の発生割合と等しい
○研修講師:具体的な説明の前にセンサーの種類を説明させて頂きますね。
センサーの種類は2種類あります。「無情報センサー」と「情報のあるセンサー」となります。
違いは先ほどの仮定(センサーの集団におけるイベントの発生割合は、センサーとならない集団の発生割合と等しい)が成立するかどうかです。
●仮定が成り立つ場合→無情報センサー(non-informative censoring)
●仮定が成り立たない場合→情報のあるセンサー(informative censoring) 競合リスクが存在する場合 など
EX)センサーの集団におけるイベントの発生割合がセンサーとならない集団の発生割合より高い場合
→同意の撤回等で試験中止になり後観察がされないセンサーの症例はセンサーにならない集団のイベント発生割合に比べてイベントの発生割合が高い可能性がある。
○研修講師:では先ほどのAさん、Bさんが疑問に思った登録から2年時点の生存率(0.533)に着目して計算してみましょう。
もしも…
1.5年時点での打ち切りのある症例の2年時点でのイベント発生割合が分かれば、
生存率は正確に求められる!!
カプランマイヤー法の生存率の算出を行う上での重要な仮定を理解する
仮定
センサーの集団におけるイベントの発生割合は、センサーとならない集団の発生割合と等しい
仮定:センサーの集団におけるイベントの発生割合は、
センサーとならない集団の発生割合と等しいとした場合
○同様に3年時点の生存率の推定値は…
○研修講師:このようにカプランマイヤー推定法による生存率の算出は「センサーの集団におけるイベントの発生割合は、センサーとならない集団の発生割合と等しい」とする仮定に基づいて算出されています。その仮定が成立しない場合、解析対象集団に対するカプランマイヤー曲線は正しい推定値から乖離します。
まとめ
○研修講師:このようにカプランマイヤー推定法による生存率の算出は「センサーの集団におけるイベントの発生割合は、センサーとならない集団の発生割合と等しい」とする仮定に基づいて算出されています。その仮定が成立しない場合、解析対象集団に対するカプランマイヤー曲線は正しい推定値から乖離します。
ただし実際に試験を行うとこの仮定が成立しないデータ(情報のあるセンサー)が入り込むことが避けられないケースが多々あります。情報のあるセンサーの影響が少なくなるような試験計画、モニタリング計画を検討するとともに実際に得られたデータにどの程度情報のあるセンサーがあるか注意しながら作成されたカプランマイヤー曲線を解釈することが重要になります。
以上で本日の研修の内容とさせていただきます。
○新人モニターAさん、Bさん:ありがとうございます。
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